僕は部屋でひとりぼっち

くさばといいます。

面白かった本(シリアの秘密図書館とサイラス・マーナー)

https://www.amazon.co.jp/シリアの秘密図書館-瓦礫から取り出した本で図書館を作った人々-デルフィーヌ・ミヌーイ/dp/4488003877/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&keywords=シリア秘密の図書館&qid=1570346303&sr=8-1

ツイッターで見て、内戦の最中瓦礫の中から本を見つけ出して図書館を作っている人たちがいるという見出しだけで引き込まれて購入した。シリアの内戦については時折ニュースで斜め読みする程度の知識しかなかったけど、これを機に少し調べてなんというか解決への道のりの難しさを知った。代理戦争の狡猾さと悲惨さよ。

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本によって一時的にでも現実から逃れようとすることの祈りのような時間は紛争の最中でもその力を発揮する。というか真髄のような気がする。銃声が鳴り響き隣人が亡くなり食糧も尽きかけているダラヤという街での読書と、平和な日本のストレス社会での読書は比べられるものではないけれど本質は同じだと思う。本ってすげえや、ということを改めて認識し続けられた。

この本のすごいところとかはAmazonのレビュー見たら一発でわかるから改めて書かないけど、自分が印象に残ったのは、政府寄りのメディアからはテロリストと呼ばれる彼らが、パリでテロが起きた時に著者(フランス生まれ)に対して心を痛めて同情のメッセージを送ってきて、著者が感激するところ。「フランスでの出来事に深く心を痛めている。ダラヤの僕たちはテロに反対する。もし僕らが苦しくなく爆撃が酷くなければ連帯の証に蝋燭を灯すが、それもできない。テロが起きたのはフランスが僕らの自由を支持しているからだと知っている。心から感謝する」(意訳)著者はこれに対してテロリストは謝らない。テロリストは死者のために涙を流さない。テロリストは『アメリ』やユゴーを引用しない。と結んだところ。反アサド政権側にはIS国のような本当のテロリストがいるけど彼らとは本当に全然違うのだ。本当に全然。

これ書くのに読み返したら書きたい事いっぱい浮かんでまとまらなくなったので次いきます。ちょっとでも気になったらお勧めします。

ちびちび読んでて最近読み終わったのがこの本、サイラス・マーナー。

https://www.amazon.co.jp/サイラス・マーナ―-光文社古典新訳文庫-ジョージ・エリオット/dp/4334754104/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&crid=V400U2F2CP9D&keywords=サイラスマーナー&qid=1570349136&sprefix=Sairasu%2Caps%2C268&sr=8-1

本屋でなんとなく気になって買ったら1000円もしてびっくりしたやつ。19世紀初頭の田舎のイングラントが舞台。友と恋人に裏切られ故郷を捨てたサイラス・マーナーは村のはずれで機織りをしながら、稼いだ金貨を眺めるのを唯一の楽しみとしていきている。そんな彼におとずれた新たな災難…というのが裏表紙の説明。冒頭で無知で排他的な田舎の人間について触れてるんだけど、日本の田舎とも酷似している。

「遠い遠い地からやってきた者たちは、たとえこの地に根をおろしても、隣人たちの不信の目がいつまでも注がれており、長年、落ち度ひとつなく暮らしていたにせよ、いったん過ちを犯そうものなら、たちまち、そらみたことかと謗られる。」

よく日本の田舎批判でこういう文脈を見るけど海外も同じ事情なんだなーと思った。まあ19世紀イングランド現代日本の現状があまり変わってないということなら日本って…となるけど多分どこも同じなんだろうな。この前読んだオーストラリアの田舎を舞台にしたミステリでもそうだったし。

この本の作者はジョージ・エリオットという名だけど女性で、英国ビクトリア朝を代表する作家らしい。海外文学には疎いので知らなかった。人間の書き方がうまいというか、登場人物の描写をよくこんな俯瞰的に書けるなあと思った。面白かったけど高いしあんまり文庫本はないので全集買おうか迷ってる。全集は…なくない?高くない?

個人的に自分が胸を突かれたのはまたしても冒頭の以下の部分。

『このような無知な人々は、力はすなわち慈悲なりとは考えられなかった。日々の暮らしに追いまくられ、熱い信心がもたらす恩恵に浴したことのないひとびとにとって、その心のうちにある見えざる存在とは、一心不乱にお祈りをして、御供物をそなえて、はじめて災いを追い払ってくださるものなのだった。彼らにとっては、悦びや楽しみがおとずれるより、苦痛や災いに見舞われる方が、はるかに多かった。かれらの想像力には、欲望や希望を育む力はなく、恐怖を生み出す記憶だけがはびこっている。「何か食べたいものはありませんか」と年老いた労働者に(作者は)かつて訊いたことがある。不治の病で床につき、連れ合いが進める食べ物を一切拒んでいた。「いいや」とかれは答えた。「普段は同じもんしか食わんしなあ、そいつが喉を通らんでなあ」かれは食欲をそそるような食べ物を、思い浮かべることすらできなかったのである。』

後半がずどーんときた。まさにこのままいくと私じゃん…食べたいものがない!たまにタピオカが飲みたくなるくらい。でも意地でも料理はしたくない…。買い物に行くのが面倒で誕プレでもらったパックのご飯と漬物で晩御飯を済ませている。戦時中かと言われた。もしくは主食が森永のガトーショコラと電子レンジでつくるポップコーンになっている。肌荒れもひどい。食に関心のない人生でも幸せだと証明しなくては。でも食後にバナナを食べているので栄養的には問題ないと思う。ビタミンはスーパーの野菜売り場の匂いで補っているのでそこも改善したいと思う。匂いでビタミン摂取は我ながら新境地に至ったと思っている。こうして乞食ムーブで同情と心配を買う術だけを身につけている。どうしよう。主旨と外れたけどいいや。

サイラス・マーナーは面白かったです。